お経をお唱えしよう!第二回日常勤行式①「香偈」
日常勤行式とは、文字のごとく浄土宗における日常の勤行。つまり日々の「おつとめ」の次第です。この日常勤行式は、僧侶だけでなく、一般の信者様も日頃仏様の前やお仏壇の前でお唱えしていただきたいものです。
この日常勤行式は、浄土宗の日頃の法要の形の基本となっており、地域にもよりますが、普段のご法事やお通夜やお葬式も、この日常勤行式をベースにしてその法要に必要な偈文や作法を足したり、不要な偈文を引いたりしながら次第を作ります。それはこの日常勤行式がとても機能的に構成されているからです。この勤行式は、序分・正宗分・流通分の三段階で構成されており、序分は自身の身を清め、仏法僧に帰依し、仏様をお迎えし、日頃の罪を懺悔し、正宗分ではお釈迦様が残したお経を唱え、お念仏を称え、流通分ではお迎えした仏様を見送るという一連の流れになっております。
今回は、日常勤行式の一番最初、序分に含まれる「香偈(ごうげ)」を紹介します。この香偈は、法然上人が師と仰いだ唐の僧侶・善導大師の『法事讃』という書物から引用されております。
〈香偈〉
願我身浄如香炉
(がんがしんじょうにょこうろ)
願我心如智慧火
(がんがしんにょちえか)
念念焚焼戒定香
(ねんねんぼんじょうかいじょうこう)
供養十方三世仏
(くようじっぽうさんぜぶ)
〈書き下し文〉
願わくは、我が身浄(きよ)きこと、香炉のごとく
願わくは、我が心、智慧の火のごとく
念念に戒と定の香を焚焼して
十方三世の仏を供養したてまつる
〈意味〉
私はこの身体が香炉のように浄らかであることを願います。
私はこの心があらゆる煩悩を焼き尽くす仏の智慧の火のようであることを願います。
私は一瞬一瞬の想いの中で、仏弟子として守るべき戒と定という香を焚き、
あらゆる世界の、あらゆる仏様に供養を捧げます。
〈仏教語解説〉
香炉・・・香を焚くのにもちいる仏具。
智慧・・・物事を正しく判断する心の働き。
戒・・・仏教に帰依した全ての者が守らなければならない行為。
定(じょう)・・・禅定の事で、智慧を得るために精神を集中させること。
香偈の香とはお香の事で、お香には用途によってさまざまな種類がございますが、私たちがよく目にするお香は、法事やお葬式の時に焚く抹香や、お墓参りの時に墓前に焚くお線香があります。その他にもお香には様々な種類がありますが、火をつけて焚くお香は香炉と呼ばれる仏具で焚きます。この香炉にも用途によって様々な種類がございますが、どれも清らかで美しいものです。またその中で焚かれるお香は、仏様を供養し、私たちの身と心を清らかにしてくれます。
よく大きなお寺にお参りに行くと、場所によっては本堂でお参りする前に参道に大きな香炉があります。参拝の皆様はその香炉から出る煙を自分の悪いところにかけると、悪いところがよくなるよとか、頭が良くなるようにあたまにかけなさいなんて言われたことがあるかもしれません。あの香炉の本来の目的は、お香の煙をかぶり、参拝の前に身と心を清めるための香炉であります。
この香偈は先ほど申したとおり、お釈迦様の残したお経をお唱えする前にお唱えする偈文なので、これからお経を唱える準備として、身と心を清らかにする思いでもってお唱えしていただければと思います。
最初ですので少々長くなりましたが、今後も日常勤行式の解説を続けようと思います。
合掌 南無阿弥陀仏